BOZZ建築工房 高田 正己さんより下記の通りご提案がありました。

BOZZ建築工房 高田 正己
〒315-0162 茨城県新治郡八郷町宇治会23-2
TEL 0299-43-3359 FAX 020-4666-7096
+++++++<http://www.bozz.ne.jp/>++++++++++

茅葺きレスキュー・ネットワークの提案

日本に現存する茅葺き屋根の家は、1000〜1500棟。 金属などで覆われたもの
は25〜35万棟といわれています。茨城にも多くの茅葺き屋根の家が
残っていますが、その数は、年々減少しています。その理由として、

A、材料がない。
B、職人がいない。
C、お金がかかる。
D、防火基準などの法律をクリヤーできない。

という4点が挙げられます。

しかし、もし上記の4点がクリヤーでき、茅葺きが新築でも採用
されることができるようになったなら、工業製品の屋根材に代えて、次のような
メリットを享受できます。

・電力を使わず夏場でも涼が得られる居住環境が得られる。夏場の電力ピーク 
を減らせる。温暖化に対応できる。
・床や、壁、開口部において気密を確保しながら、室内水蒸気を逃がし
壁内結 露を妨げることができるので、CO2 排出を低減できる。
・自然素材であるため、製造・廃棄時に環境負荷をかけない。製造時には、茅 
場の確保により、無農薬エリアを維持し、近隣の環境保全に役立つ。廃棄時 
には、農的に肥料として還元すれば、焼却時のダイオキシンも出さない。
・メンテナンスが必要であるために、低成長時代の消費需要を確保できる。
・柔らかなシルエットが、景観の品位を上げる。
・近隣または電子ネットワークを通し、葺き替え工事に参加することで、市民 
間、のコミュニケーション形成に貢献できる。

まとめて言い換えれば、現在の工業生産による建築材料に代えて、
自然植物材料を積極的に使うことで、環境負荷の少ない、持続可能な農本社会
づくりに貢献できる。といえます。当地茨城は、まさにそのような21世紀型の
住環境の実現には、うってつけの地域ではありませんか。

上記のような明るい希望を持ちながら、冒頭にあげた、4点を解消する方法
がないものか、ひとつずつ検証してゆきたいと思います。

A、材料がない。
 茅葺き屋根に使える茅は、毎年手入れの行き届いた茅場から生産される茅
のほうが、使い勝手がよく、長持ちします。そのような素材は、需要との
バランスが悪く流通量が多くありません。その意味では確かに、すぐに使える茅
はないといえます。
 しかし、材料の、ススキや、ヨシ、アシなどは、霞ヶ浦沿岸を始め、
常総台地、あるいは利根川、那珂川、鬼怒川など一級河川流域では、
あたりまえに見受けられます。このような箇所は多く自治体や、国の管理地
である為に、公的資金により、毎年刈り取り作業や、焼き払い作業が行
われています。これらを有効な資源として、しかるべき公的団体が刈り取りを申
し出たなら、大量の茅を無料で手に入れることも可能なのではないでしょうか。
また、半公共性の強い茅場もあります。県内の農村部には、いまから50年前
までは、集落内に必ず茅葺き職人がいて、屋根屋という名称で呼
ばれていました。集落では、屋根屋とは、茅葺き職人のことなのです。瓦は
瓦屋、トタンは板金屋であって、けっして屋根屋ではなかったのです。
そのような訳で、旧集落内には、荒れ果てたとは言え今でもかつての茅場が多く
残っています、そのような場所を再度利用できる茅場として復活
させることができます。(例:土浦市宍塚大池近隣)このような場所では、同時
に刈り手を探さなければなりません。そのためには、人が茅場を手入れし維持
することで、環境を保全し、生物種を増やすことに貢献している根拠を示し、
その結果として、環境保全NPOや、自然観察のメンバーのボランティアの力
を借りる事も可能なのではないでしょうか。里山保全活動とリンクする
環境保全活動には、補助金制度もあり、茅再生ボランティアへのバックアップも
可能となります。

茨城県内に本部のある茅舎の会では、茅葺き屋根に住んでいる建主の他に、
茅葺き職人も数名参加しいます。彼らの連絡先は、インターネットでも紹介
されています。
http://www3.vc-net.ne.jp/~bousha/shokuninn.html
彼ら職人のの元には若手の職人志望者も集まり、今後もその技術が伝承
されつつあります。

C、お金がかかる
 北側15年、南側30年といわれる茅葺きのメンテナンスには、たしかに費用
がかかります。新たに全面葺き替えをした場合には、600万〜1000万ものお金
がかかると言われます。それゆえ、かつては、貧乏の象徴といわれた茅葺き
屋根は、今では経済力のステイタスと評価される逆転現象も起こっています。
費用の内訳のほとんどは、職人の人件費です。しかし、作業全体にわたって、
職人の専門技能が必要なわけではなく、茅の解体、材料の束ね、屋根への運搬
など、素人でも作業に参加できる部分はたくさんあります。それらの助っ
人作業に、かつての「結い」のような労働力の交換がおこなえたなら、その
費用は、半減されることでしょう。ここに、労働力交換の道具である、
地域通貨の存在意義を感じます。(地域通貨の説明は、別稿に譲ります)

また、オランダで改良されたヨーロッパの合理的な茅葺き技術などを参考に、
日本にあった、低コストの茅葺き法の導入の余地もあります。オランダ工法
では、職人ひとりで、茅葺きの屋根の葺き替えができます。仮に1件の家の葺き
替えが150万程度で済めば、年4棟で、600万の年収を得られることになります。

現在のデフレ気味の経済動向からすると、コスト面の改善に、茅葺き合理化工法
および、人海戦術の両面のバックアップを取り入れたとしても、コロニアルや、
板金屋根とコスト面で互角に戦うには、1棟100万ラインを達成する努力が必要
でしょう。

ここで国に期待したいことは、工業生産材料と、農林業生産材料との環境負荷
データの公開です。生産する際に、大量の電力や、水を使い、CO2
をまきちらし、廃棄される場合も単なるゴミとしてしか機能しない
工業生産材料は、環境を維持する上でのコストがかかるはずです。それに比
べて、生産時には、CO2を吸収し、廃棄されるときには、有機質肥料として土に
還元される、農林生産材料は、将来に渡って、持続可能で安全な材料です。
このような環境負荷コストを載せて、コロニアル、板金などの材料を茅と比較
することが必要であり、環境負荷分を税という形で徴収することで、多くの人は
茅葺き屋根に価値を見いだし積極的に選択するはずです。そしてその選択
こそが、環境を維持する賛成票となるのです。

オランダやデンマークがなぜ、国を挙げて茅葺きに着目しているかといえば、
まさにこの環境優位性のある材料だからです。今後中国や第三世界が、工業生産
による大量消費のサイクルに入れば、より環境汚染を広げ地球温暖化が進
むことで、海面の上昇は必至です。オランダが海面より低い国であることが、
このような地球規模の変化に敏感になる理由です。東京や、ここ茨城県南
でもまさに同様の現象が起こります。目先の利潤に振り回されることなく、将来
への展望を持った視点で判断するなら、茅葺き屋根の優位性は一目瞭然です。

またメンテナンス時の経費が、必ず地元に還元されるなら、低成長経済時にも、
その地域での経済活動は、維持される訳です。毎年ある程度の需要と消費が必
ずある。というサイクルこそが、低成長時代のモデルです。農林生産資源
はまさにその典型であり、茅葺き屋根にメンテナンスが必要で有ることが、
持続可能な経済を約束するのです。

茅葺き屋根の葺き替えにどれくらいのお金をかければよいのか、またそれが高
いか安いかという点には、なお相当の議論が必要です。もし経済活動を、
自然環境とリンク付け、適正に価格を付けられるようになれば、その結果、国や
自治体は、積極的に茅葺き屋根を導入できるような体制にシフトできるよう
経済的フォローをすることになるでしょう。

D、防火基準などの法律をクリヤーできない。
時代に合わない悪法であるなら、理を通して変えるべきです。オランダでは、
耐火ボード下地による改良工法で、近接したアパートの屋根も茅葺きが可能
となっていますが、基本的には郊外向きの屋根材には違いありません。都市計
画区域内の防火地域では、よほどのことがない限りその使用は控えたほうがよい
材料です。ただし、イギリスの円形劇場では、市街化区域での茅葺き屋根も実現
されており、地域市民の必要性、要求度によっては、実現されてしかるべき素材
です。

茅葺き屋根の鎮火においては、内部火種の消火が困難ですから、内部からの出火
を押さえる工夫が必要です。現行建築基準法では、下記使用室での壁天井には、
不燃材の使用が義務づけられていますので、その点は遵守する必要があります。
また、暖房設備が、燃焼型である場合はさらに煙突廻りの防火対策は入念
になされるべきです。

外部からの延焼については、雨水の防火用水的利用。および水以外の消火剤の
使用も考えられます。

法としては、隣家との水平距離によって、必要な防火設備のグレードを取り
決め、その上で茅葺き屋根を認めることが理にかなった法律のはずです。
一方的に茅葺き屋根の使用を認めない法律は、自分たちの歴史・文化を否定
するものです。

次に積極的に茅葺き屋根を導入するモデル
茅葺きレスキュー・ネットワーク(需要と供給の縁結び)を提案します。

茅の確保と、茅葺きの需要とは、連動して動いているわけですから、どちらか
一方だけが増えても困ってしまいます。茅が多すぎても、最長3年程度しか保存
しきれません。逆に、茅葺きの需要が多すぎては、材料のストックが追
いつきません。

そこで、材料の調達と、茅葺き需要の発掘とを同時に進めるために、双方の情報
へのアクセスの仕方を考えることにします。

■茅場の確定
茅場には、国や自治体が管理する公的茅場と、入会地のような半公共茅場、
そのほか個人所有の私的茅場があります。このうち、ある量がまとまって入手
できるのは、公的茅場ではないでしょうか。したがって、県内の茅場で、公
によって管理されている場所を手始めに茅場をリストアップします。
評価基準軸として、面積、種類、品質、管理具合、将来の安定度、搬出し易
さなどを目安に、ポイントの高い適切な場所を選択し、交渉します。
・公的茅場 水戸射爆場跡地、渡瀬遊水池、霞ヶ浦周辺
・半公共的茅場 宍塚大池周辺

できれば、刈り入れ作業を受託し、作業の継続的受注体制をとれれば、安定した
経済活動とすることができます。

■茅葺き需要の発掘
現存茅葺き屋根実態調査の実施。
小学校区および中学校区単位で、茅葺き屋根情報を募ります。
小学3年生以上、中学生は全員に、社会科の郷土の研究の名目で、近隣で見かけた
茅葺き屋根の場所を調べてもらいます。課外授業の時間を利用し、茅舎の会の
メンバーが出向いて、茅葺きのすばらしさを講義する出張授業を併設
するのもよいでしょう。できれば、その場所を住宅地図上に記入
してもらうところまで学生に完成させてもらえば、充実した資料となります。
調査結果により茅葺き屋根の家に該当するお宅には、茅舎の会のメンバーが
出向き、茅葺き屋根のすばらしさをPRし、同時に茅葺き屋根調書の
アンケートに協力していただく。その中から、1件でも実際の茅葺きの需要が掘
り起こせれば、大成功となる。

茅葺き屋根調書内容
住所、家主名、TEL、本体上棟年月日、規模、最終葺き替え年月日、今後の
葺き替え予定、結いへの協力の意志の有無、他の茅葺き屋根
のありかなどをたずねる。

同様の調査を、それぞれの市町村ごとに行う。

葺き替え予定の早い順に、葺き替え順番リストをつくる。

■ストックヤードの確保
葺き着替えリストの一番上位の物件の近くにそのお宅のための茅場ストックを
確保する。可能な限り無料で借りる。調整区域内の、休耕畑や、田であっても建
てられる用途である農業用仮設とするために、葺き替えに使った茅を堆肥化する
施設という名目で、基準法の申請をする。実際に使用済み茅を堆肥化して、謝礼
として渡してもよい。堆肥化するには、牛糞、鶏糞などと混ぜて処理する方法
もある。借りる期間は、茅葺き屋根葺き替え工事の2〜3年前から、
工事完了後堆肥化が完了するまでの1年間。合計3〜4年程度。

仮設小屋の構造は、竹のベントフレームによって造られ、屋根兼外壁はテント張
りとする。役目が終わったときにはただちに解体撤去できる構造とする。
搬入搬出に便利なよう、中央に、転がりローラーを設置する。

■材料の運搬
茅の運搬には、2〜4tのトラックが必要。
ストックヤードへの搬入・搬出には、レッカーも必要。

■茅葺き工事
茅葺き工事には、専門職と、レスキューボランティアスタッフを手配します。
この工事の連絡には、インターネットを利用し広域から人手を集めます。

■メインストックヤードと技能学校
茅のメインストックヤードは、茨城県○○に設置します。このストックヤード
では、常時2棟分の茅を確保し、若い職人を育てるための、茅葺き学校を常設
します。また、一般の方にたいしても、ボランティア協力していただける方
には、茅葺きの実大模型で、施工実習をしていただきます。不定期に、海外との
交流を持ち、ヨーロッパの茅葺き職人との交流も深めます。

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黒坂清子
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