現代の茅葺き・ヨーロッパ事情
(財)保存技術教会の日塔和彦さんの欧州茅葺き保存体制視察研修記
6月上旬に第2回欧州茅葺き保存体制視察研修を実施し、24名の参加者と共にオランダ・デンマークについて見ていきました。今回は前回と異なってショックの連続でした。といいますのは、両国において茅葺きは特別なものでなく、一般的な屋根材であり、どこにでも普通に見られます。それどころか、新築の茅葺き住宅が盛んに建てられていて、しかもそれが高級住宅として土地付きで1億円程度で売る出されているということです。また、郊外の住宅団地では茅葺き屋根の住宅が沢山建設されており、オランダでは年間2000棟も新築されているとのことでした。
写真提供:オランダ茅葺き技術者組合
その他、現代建築にも茅葺きが取り入れ始められています。見学してきたのはテーマパークの入口門の建物でしたが、巨大な建築が茅葺きで葺かれており、その造形はかなり魅力のあるものでした。それには垂直な場所でも茅で葺けるという技術的裏付けがあっての話ですが、これは風車の壁を伝統的に茅葺きで葺いてきたという事実があるからです。
写真提供:オランダ茅葺き技術者組合
また、日本と同様にある時期に茅葺きを瓦や鉄板に替えてしまったのを現在、元の茅葺きに盛んに戻していると言うことです。茅葺きは特別なものではないので、補助金などの援助は勿論なく、すべて自費で行っています。なぜ多額の費用をかけて茅葺きに直すかを所有者に聴くと
1.茅葺きは形がよい。
2.冬暖かい(下地に断熱材を入れて葺いている)。
3.ステータス・シンボルである(お金持ちであることを示している)。
というのが主な理由でした。
写真提供:オランダ茅葺き技術者組合
建築中
輸入品の茅
新工法の茅葺き
日本では建築基準法で茅葺きを無くそうとしているのに対し、オランダでは茅葺きを増やそうとしています。まったく逆です。この傾向は前回の英・独でもある程度は感じられたことですが、こんなに鮮明にでてくるとは出発前には考えられないことでした。この大きな原動力としてはオランダもデンマークも自然を大切にするお国柄で、環境保全ということから来ていると思います。これはつい最近の京都議定書問題を見てもよく理解できます。自然のものを用いて、使い終わった後も自然に戻る茅は環境的に素晴らしい素材です。
茅葺きが環境問題から人気があるとすれば、今後ますます盛んになるのは明らかです。欧州での様子を聴いてみるとすでにフランスでもイタリアでもこの傾向がはっきりしており、アメリカでも元々ある東海岸北部だけではなく、中部のミシガン州でも茅葺きの別荘が人気があるとのことでした。
いずれこの動きは日本にも波及してくるのは間違い有りません。ただし、日本の建築家も環境関係者もこの動きを察知しているにも関わらず、なぜか情報が発信されないままになっております。
私が日本におけるこの情報の発信者にならなければならないと思っています。そして、日本にもこの機運がでてきた時に、日本の茅葺きの伝統が消えてしまっていたのでは、笑い話にもなりません。どうにかして茅葺きの技術を次代に伝え、風土豊かな各地の茅葺きの伝統を残さなければならないと、改めて思った次第です。